【村にまつわる話】杉沢村伝説

地図から消された村・・・杉沢村。
今から50年ほど昔、青森県八甲田山系の裾野に杉沢村という小さな村があった。
ところがある日のこと、この村に住む一人の男が突然発狂して住民全員を手斧で殺害、犯行後男もまた自らの命を絶ってしまったため村には人が一人もいなくなってしまったのだ。
この事件により村として成立しなくなった杉沢村は、事件を覆い隠そうとする自治体によって密かにその存在を抹消された。
地図の上から名前を消され、青森県の公式記録の中からも名前を消され。
廃墟と化した杉沢村にはそれ以来近づくものはなく、50年の歳月が静かに流れていった。
ところが・・・

「確かこの辺だって聞いたんだけどな」
「ねぇ、本当に行くの?止めようよ」
「今さら言っても遅いって」
地図から消された村「杉沢村」の噂を聞きつけた太一、美雪、聡の三人は、青森県の山中を車で走行していた。
もはや時間は深夜となった。外灯が極端に少ないため、ヘッドライトでもまだ闇が生きている。
杉沢村の言い伝えは青森県が隠ぺいしたと言うが、事実は定かではない。
都市伝説の一つとして数得られる伝説だが、今回その伝説を生で見学しようと、三人はわざわざ東京からやって来たのだ。
運転手の太一はわざと闇の深い道を見つけ、そこへ車を走らせた。
杉沢村は山の奥深い場所にあり、入り口付近にドクロの形をした石があると言う。
その周辺には巨大な鳥居が立っており、やって来る人間を拒絶しているような雰囲気を醸し出しているらしい。
だが一向にそれらしい場所に辿り着けずにいた。文字通り地図から消されているために地図は役に立たない。
杉沢村に辿り着くためには当てもなくただ進み続けなければならないのだ。
怖がっている美雪を余所に、太一も聡も半ば諦めていた。もう何時間も走っているのに見つからないのだ。
やはり都市伝説はあくまで伝説であって事実ではないのかも知れない。そう思うようになっていた。
「あ〜あ、もう止めようか。全然見つからないし」
太一が真っ先に根を上げた。
「その方が良いよ。怖いしさ」
美雪はただ怖がっているだけだった。
「帰るか。太一、帰りの運転代わるよ」
「ああ、そうしてくれ」
そう言うと太一は車を止め、外に出た。それに続き聡もドアを開ける。
「さて、帰るかね。ん?どうしたんだ、太一」
「おい・・・あれ見ろよ」
「なんだ?」
「どうしたの?」
異変を察したのか美雪も車から降りてきた。
太一は右手の人差し指を前方に突き出している。その先には巨大な鳥居が立っていた。
「鳥居だ・・・・と言う事はその近くにドクロに似た石が・・・」
「あるぜ」
太一はその下を指差した。そこには見るからにドクロと言った表情を浮かべている大きな石が二つ、転がっていた。
「どうやら俺たち辿り着いちまったようだぜ」
「嘘でしょ、本当にあったの!?」
そこは紛れも無く言い伝え通りの場所「杉沢村」の入り口だった・・・。
「ちょっと行ってみるか」
「ええ、止めようよ。怖いって!!」
「せっかく来たんだ。少しだけ見てみようぜ」
太一と聡は美雪を無理矢理連れて鳥居を潜った。
鳥居を潜り、100メートルほど進むと、三人の前に空き地が広がり、そこに4軒の古びた廃屋が姿を現した。
「これが杉沢村・・・・」
それは想像以上に不気味な廃墟だった。何とも言葉では表現できない嫌な空気を感じる。
本来なら長居をするべき場所ではないのだろう、本能が「逃げろ」と言っているのだが
好奇心がそれをねじ伏せており、恐怖よりも期待の方が圧倒的に大きかった。ここまで来て帰るわけには行かない。
杉林に囲まれた廃墟は、もはや村と言う雰囲気は感じられない。単に林の中に存在する廃屋と言う感じだ。
かつてここで人間が生活をしていたとは想像も着かないほどの闇がそこにあった。
三人は1軒の廃屋に足を踏み入れた。
「なんだよ、ここは・・・・」
「なんか、嫌だな・・・怖い感じがする・・・」
「不気味だな」
三人が入った廃屋は荒廃が進んでおり、見るも無惨だ。
壁や天井には赤黒い血の跡のようなものが残っている。本当に血なのだろうか・・・。
太一と聡は背中に冷たい感触を覚えた。来てはいけない場所へ来てしまったようだ。
「ねぇ!おかしいよ、人の気配がする!!もう嫌だ!!」
「おい、美雪!!」
美雪はそう叫ぶと耐えられなくなったように走り出した。
「ま、待てよ!!」
三人が廃屋から出ると、外では奇妙な影が無数に蠢いているのが見えた。
それは明らかに人間の気配であり、自分たちに敵意を剥き出しにしている。
三人は恐怖で支配され、車の元まで走った。
だがここで信じられない事が起こった。
「あれ・・・どうなってんの」
「なんだよ、これ・・・」
「どうなってんだ!!」
三人は走るのだが、一向に前に進まないのだ。
まるで全体がスローモーションになったように景色と体がゆっくりと動いている。
広場から車までの間はわずか100メートル。しかも一本道しかなかったはずだ。
物理的に考えても戻れないはずが無いのだ。にも拘らず三人は進む事ができない。
「太一!聡!」
気が付くと太一と聡の姿が消えていた。先ほどまですぐ隣を走っていたはずなのに・・・。
「はあ・・っははああ・・・・」
美雪は脇目も振らず走った。ただただ助かりたい、それだけを心で叫びながら。
自らを取り巻く異様な気配は未だ感じる。無数の気配が自分たちに憎悪をぶちまけているのが分かるほどだ。
それが証拠に先ほどから全身の毛が総毛立ち、まさに身の毛もよだつ感触が取れない。
気が付くと美雪は車の前に戻っていた。依然として太一と聡の姿は無いが、今は彼らを心配している余裕など無かった。
美雪は勢い良くドアをこじ開けると、身体を車内に滑り込ませた。
「キーは・・・!!」
幸いなことに車のキーは差し込まれたままだった。すぐに戻ると思ってそのままにしておいたのだ。
太一と聡は後で誰かを呼んで助けに来ればいい。今は自分の身の安全を確保するのが先立った。
「あれ・・・どうしてよ!!掛かって!!」
美雪はキーを回したが、何故かエンジンが掛からない。
「冗談でしょ!!掛かって、お願いだから!!」
異様な気配は既に車の周囲を囲うように集まっていた。一刻も早く逃げなければ殺される。
その時だった。
「ドン!ドン!ドン!」
「いやあああああああっ!!」
突然車のフロントガラスから大きな音が響いた。見ると血の着いた手の跡が誰も居ないのに張り付いている。
音はフロントガラスだけではなかった。
「ドン!ドン!ドン!ドン!」
まるで大勢の人間が車全体を叩くように、鳴り響いている。その度に車は揺れ、不気味なリズムを刻む。
「いや・・・いや・・いやあああああっ!!」
美雪の意識はそこで途切れた・・・。

地元のとある住人が山道の途中で、血の手形が無数につけられた車の中で茫然自失となっている女性を発見した。
女性はすぐに警察に保護され、近くの病院に搬送された。
彼女の髪は恐怖のためか一夜にして白髪と化していたという。
病院に運び込まれた彼女はそこでこの恐怖の体験を語った。
杉沢村の伝説を検証すべく、他にも二人の男が一緒におり、山中で彼らと逸れてしまったと言う。
話を聞いた地元の警察が捜索に当たったが、それらしい人物は特定できず、終ぞ発見される事はなかった。
警察からの事情聴取が終わると女性は突然姿を消してしまった。
それ以後彼女の姿を見た者なく、彼女の連れであった二人の男性も依然として見つかっていない。

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